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ニッセイ緑のオンライン環境講座③~ツバキ・サザンカ~(講師:林 将之氏/樹木図鑑作家)
《テーマ》学校の樹木トップ20紹介③『ツバキ・サザンカ』
サザンカ サザンカ 咲いた道・・・
音楽の教科書に載っている「たきび」の一節で、サザンカ(山茶花)の名前を覚えた人も多いでしょう。まさにサザンカは、落ち葉たきをする11月ごろから咲き始める晩秋〜冬の花です。では、サザンカの花は何色でしょう?
答えは白です。野生のサザンカは、そのほとんどが純白の花をつけます。けれども、ピンクや赤色の花を思い浮かべた人も多いのでは? じつは、庭木にされるサザンカでは、品種改良されて淡いピンク色や赤色に近い花をつけるものも多いのです。では、もともと赤い花をつけるツバキ(椿)との違いは何でしょう?
代表的な区別方法は、花びらが1枚ずつ散るのがサザンカで、花ごとボトリと落ちるのがツバキという見分け方です。ほかにも、花が平らに開くのがサザンカ、半開き状なのがツバキ、葉が10cm近くあって大きいのがツバキ、5cm前後と小さいのがサザンカ、といった違いもあります。ツバキにも白やピンクの花をつける園芸品種があるので、花色に関係なく、これらの区別点で見分けることが大事です。
ニッセイ緑の財団による学校の樹木名プレート設置数ランキングでは、ツバキ・サザンカ類が第3位に入りました。その内訳は、多い順にサザンカ、ツバキ、ヤブツバキ、カンツバキとなっています。ツバキとヤブツバキはほぼ同義で、一般には野生の個体をヤブツバキ、そこから品種改良された園芸品種も含めてツバキと呼んでいます。
では、カンツバキ(寒椿)とは何者でしょうか? 実はこれがクセ者です。花色はヤブツバキに近い濃いピンクで、花びらはサザンカ同様に1枚ずつ散り、葉の大きさはツバキとサザンカの中間サイズです。全体的にはサザンカに近いことから、サザンカの園芸品種、またはサザンカとヤブツバキの交雑種と考えられています。校庭や公園、道路沿いなどに非常に多く植えられており、このカンツバキを「サザンカ」と呼んでいるケースも多いのです。そのため、樹木名プレートの数は少なくても、実際にはカンツバキが多くの学校に植えられていると思われます。
いずれにせよ、ツバキもサザンカも通常は高さ1〜5mほどの比較的小さな木で、刈り込んで列状に植えられたり、生垣にされたりすることが多いので、校庭でも本数が多い花木です。その意味では、同じくランキング11位に入ったツツジ類もよく似た存在といえます。ヒラドツツジ、オオムラサキツツジ、サツキツツジ、クルメツツジ、キリシマツツジなど、多くの種類や呼び名がある花木で、やはり刈り込みや生垣として校庭に多く植えられています。
さて、校庭のツバキ・サザンカ類といえば、鮮やかな花以外にもう一つ注目を浴びる要素があります。毒の毛をまき散らすチャドクガ(茶毒蛾)という毛虫が、よく発生することです。チャドクガは学校で見られる毒虫の定番で、子どもたちは植え込みの影に入り込むことも多いので、大人以上に頻繁にかぶれてしまうのでしょう。そのため、新たにツバキやサザンカが植えられることは少なくなっているようです。
ダイオキシンの発生や火災を防ぐためにたき火が禁止され、毛虫対策でツバキやサザンカが校庭から減りつつあることも、時代の流れかもしれません。とはいえ、火の特性や扱いを知ること、危険生物の特徴や対処法を覚えることは、子どもたちにとって今も大切な学びであることには変わりないと思います。
(林将之/樹木図鑑作家)
★当シリーズのこれまでの講座について
(告知動画)https://www.facebook.com/nissaymidori/videos/255907032214863
(第1回講座)https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3270397186326628
(第2回講座)https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3287818484584498
★講師について
当講座の講師の林将之氏は、当財団が2019年度より全国の小・中学校等に提供している「学校の木のしおり」の作成に携わっていただいております。
★「学校の木のしおり」の提供(2020年度分の募集受付)について
ニッセイ緑の財団では、現在学校の木のしおりの活動実施校を募集中です!
ご興味のある方は以下URLより募集ビラ・募集要項をご確認の上当財団宛にお申込みください(お申込みはメール・FAXどちらでも可能です)。
(HP記事)
http://www.nissay-midori.jp/topics/details/776
(FB記事)
https://www.facebook.com/nissaymidori/posts/3263263873706626
1:花ごと地面に落ちたヤブツバキ。これに対し、サザンカが花びらが1枚ずつ落ちる。
2:野生のサザンカ。四国、九州、沖縄の低山に生え、10〜12月ごろに白い花をつける。
3:サザンカの園芸品種の花は、淡いピンクから濃いピンク、八重咲きなど多様。
4:野生のツバキ(ヤブツバキ)の花。10〜4月まで見られ、春にピークを迎える。
5:左はヤブツバキ、右はサザンカの葉。いずれもツバキ科ツバキ属の常緑小高木。
6:オトメツバキの花。ユキツバキ(日本海側に分布するツバキ)の園芸品種。
7:カンツバキの花。花びらの数が多く、サザンカのように平らに開く。
8:カンツバキの生垣。樹高が1m程度の狭義のカンツバキと、2m以上になるタチカンツバキがあり、写真は後者。
9:ヒラドツツジ。花も葉も大きく、花色は様々。花が紅紫色のものはオオムラサキツツジとも呼ばれる。
10:ツバキの葉についたチャドクガ(茶毒蛾)。集団で発生し、毒の毛が皮ふにつくと赤くかぶれる。こすると毒の毛が広がるので、テープで毛を取ったり水で流したりすることが大事。