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《森の植物の歳時記》[273]【フタリシズカ(二人静)】
林の縁や、林内で良く見かけます。横に這う地下茎で増えていきますので、群生していることもあります。
花穂を2本(3~5本のものも見かけます)出す姿を、謡曲「二人静」で静御前とその亡霊の舞姿に喩えた命名と言われています。
フタリシズカに先がけて咲くヒトリシズカ(一人静)もこの謡曲が語源と言われていますが、花穂は1本です。
春を少し過ぎたころ、草丈30~60㌢にもなります。木々の葉が繁って、林内が薄暗くなり始めるころに咲く花は、花弁はなく、花粉を出す葯(やく)を支える花糸(かし)が肥大し内側へ巻き込んだ姿で、白い小さい塊が並んで穂のように見えます。大振りな葉も光沢のない緑色で目立たないのですが、存在感はあります。
蜜を持たない花には、花粉を求めるハナアブの仲間や甲虫類が訪花していることが報告されています。
夏から秋ころになると、花を開かないで自家受粉をする閉鎖花の存在も知られています。林内は更に薄暗くなっている上に、葉に隠れるように咲く薄緑色の花は、気をつけていないと見過ごしてしまいます。
果実にはアリが群がっている光景が見られます。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)