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《森の植物の歳時記》[265]【ヤマナラシ(山鳴らし)】別名 ハコヤナギ(箱柳)
日本全土で見られるヤナギの仲間です。
街路樹や公園樹として植えられていることもあります。
葉柄が左右から押しつぶしたように平たくなっているので、風で揺れやすく、葉の触れ合う音で山が鳴っているようだということからつけられた名前です。葉の基部には花外蜜腺(腺点)があり、アリが集まっていることもあります。
材が白く、軟らかいので、細工しやすく、箱を作る材料にされました。ハコヤナギと呼ばれる所以です。
雌雄異株です。早春、開葉前に咲く花は、雌株は鮮やかな緑色に見えますが、雄株は暗灰色の塊に見えます。花粉は風に乗って散布されます。
綿毛に包まれた種子は風に乗って飛散しますが、種子の寿命は短く、発芽率は高くはないようです。
多くの場合、横に伸びる根から新しい芽を出すことで新しい株を作ります。
加工しやすい材はマッチの軸、割りばし、パルプの原料などとして利用されています。
江戸時代、歯の清潔を保つために房楊枝が使われていました。今でいう歯ブラシです。庶民が使う手ごろな値段の房楊枝はヤマナラシで作られていました。柔らかい房ですが、腰がないという欠点もあったようです。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)
ヤマナラシ