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《森の植物の歳時記》 [204] 【ソテツ(蘇鉄)】
九州南部の海岸の岩場などに自生する植物ですが、潮風や大気汚染にも強く、やせ地でも生育できるので多く植栽されます。菰巻きをした姿は公園などの冬の風物詩になっています。
樹勢が衰えたとき、鉄類を株元に入れると回復するという言い伝えがあり、名前の由来と言われています。
室町時代、京都の庭園に植えられたという記録があります。中国との貿易によって持ち込まれ、その後、江戸時代に至るまで、多くの神社仏閣や庭園などに植えられました。
雌雄別株で、夏に各々の花をつけます。雄株は太い円柱状、雌株は大きな球形の花の集合体を作ります。雄株に咲く雄花は花粉を放出したら役目を終えて倒れます。雌株に咲く雌花は花粉を受けて受粉をし、実は赤く熟れます。“赤いソテツの実も熟れる頃・・・”と歌われたのはこの光景です。(受粉できないで実が赤く熟れないままになることもあります。)
沖縄奄美諸島では幹、実共に、でん粉源として欠かすことのできない存在でした。幹、実共に有毒ですので、十分に加熱したり、水に晒したりという処理が必要になります。処理が不十分で中毒者が出たという報告もありますので要注意です。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員
ソテツ(蘇鉄)
ソテツ(雄株)
ソテツ(雌株)