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《森の植物の歳時記》 [153] 【イヌガシ(犬樫)】
関西の山地で多く見られる常緑広葉樹です。奈良県の春日山周辺や、広島県の安芸の宮島など、観光地でも多く見られるところがあります。
イヌガシ(犬樫)という名前ですが、クスノキの仲間です。イヌという名は役に立たないとか、ちょっと劣るという意味を込めた名前と言われることが多いようです。材が堅くて有用とされるカシ類(ドングリの仲間)に似てはいるが、材質が劣るということなのでしょう。
“イヌ”とついてはいますが、工具材や薪炭材として利用されていますので、しっかり役に立っています。
雌雄異株で、雄花の方が華やかに咲き乱れます。早春の花の少ない時期、ちょっと薄暗い常緑広葉樹の森で咲く花は、思わず駆け寄ってしまうような存在感があります。
一般には高木になりますが、強風には弱く、台風被害を受けやすいことも報告されています。
シカが食べないという報告があり、奈良公園や安芸の宮島で多く見られるのもご納得いただけるでしょうか。
まだ寒さの残る早春、常緑広葉樹の森で咲きますので、あまり注目されることがないのが残念です。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)