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《森の植物の歳時記》 [114] 【カヤ(榧 栢)】
カヤはヒノキ、サワラなどと共に、常緑樹でいつも青々としているので、めでたいものの代表として松柏と並び称されてきました。万葉集では榧、栢と書いて“かえ”と読み、カエの語源は「変えず」に由来し、常緑の意からきているとされています。葉は蚊遣りの原料として使われ、カヤの名はこれに由来するともいわれています。雌雄異株です。
材質は緻密、堅硬で、様々な用途に使われてきましたが、近年、注目を浴びているのは将棋盤、碁盤でしょうか。緻密な材で、高級品とされています。
秋に熟すカヤの実は縄文時代より食用とされており、炒って食するほか、搾って取った油はカヤの実油として整髪油や行燈の灯火油として使用されました。高野山などで灯用として用いた記録が残っています。
更に、カヤの実は特に十二指腸虫やさなだ虫に有効といわれ、昔からお腹の虫の駆除に重宝されてきたようです。
家内安全、厄除招福、延命長寿のご利益のあるお守りとされたり、秋の祭事に神前にお供えされる神社もあります。
小野小町と深草少将の百夜通いの話に登場するのもカヤの実です。
廣畠眞知子氏(NPO法人千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)