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《森の植物の歳時記》 [91] 【ツユクサ(露草)】
朝(あした)咲き夕は消(け)ぬる月草(つきくさ)の 消ぬべき恋も我はするかも
万葉集に見られるツユクサの歌(詠み人知らず)です。古くは月草と呼ばれていました。着草(つきくさ)に由来した名前で、花を直接衣料に擦り付けて色を着けていたことに由来すると言われています。ただ、この着草で染めた色は、水に浸すと消えてしまいます。早朝に咲いて、昼頃にはしぼんでしまうことに加えて、染めた色も消えてしまうというはかなさが、万葉人の恋心にもつながったのでしょうか。
花は不思議な形をしています。花弁は3枚あるのですが、青色の2枚が目立ち、下の方にある半透明の花弁は見逃すこともあります。雄しべは青色の花弁近くに3本、中ほどに1本、前に突き出すように2本と計6本あるのですが、前に突き出た2本が受粉の大部分を担います。他の4本は、一応、花粉もあるのですが、看板として客引きが主な役目となっています。
近年は花弁に斑が入った園芸種“メガネツユクサ”や、移入種のマルバツユクサなどが道端で見られるようになっています。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)
マルバツユクサ
メガネツユクサ