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《森の植物の歳時記》[70] 【イワタバコ(岩煙草)】
【イワタバコ(岩煙草)】
湿り気のある岩場に生えて、葉がタバコに似ていることからの名前ですが、タバコの代用にはなりません。若葉はちょっと苦みがあって、山菜として食べる地方もありますが、根を張りにくい岩場という限られた環境の中でしか生育できず、数が減少しています。眺めて楽しみましょうか。
岩壁に下向きに咲く花は、ナスの花に似ていると表現される方もあります。花の底の部分にあるオレンジ色の筋は上(背後)から降り注ぐ光に映えます。虫を誘っているのでしょうか。
受粉の多くはマルハナバチの仲間に拠ります。花にぶら下がるように掴まって体を振動させ、花粉を振りまきます。花のサイズが、マルハナバチの大きさにピッタリのようです。
種子は0.3×0.6㎜と微細で驚かされます。岩壁で熟した果実は、種子を上から振り撒くように揺れます。幼苗が壁面に張り付くように育つ理由、ご理解いただけるでしょうか。
地域によって、軟毛の多く生えているものがあります。ケイワタバコと呼ばれています。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)