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《森の植物の歳時記》[64] 【アヤメ(菖蒲)】
【アヤメ(菖蒲)】
「いずれ菖蒲か杜若(かきつばた)」と言われます。甲乙つけがたいことの喩えとされますが、見るべきポイントを知ると、迷いはなくなるかもしれません。
先ず、生育場所が違います。アヤメがやや乾燥した場所を好むのに対して、カキツバタは湿地を好みます。自生地ならば生育環境が異なり迷いはないのですが、公園などで水辺にアヤメが植えられているのを目にすることがあり、悩ましいこともあります。カキツバタが乾燥地に植えられることはありません。
花の構造はちょっと複雑です。一番外側の外花被片(花びらのようなもの)、二番目は細めの内花被片が突っ立っています。一番内側は3裂した花柱(雌しべ)の先端です。この一つをちょっと持ち上げると雄しべが隠れています。この隙間に蜜を求めて虫が入っていき、受粉に貢献します。そのため、一番外側の花被片には虫を呼ぶ蜜標(ネクターガイド)と呼ばれる模様があります。
アヤメはこの蜜標の綾目(網状の模様)が語源という説があります。余談ですが、カキツバタの蜜標は白い筋です。アヤメには白い花を咲かせるものもあります。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)