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《森の植物の歳時記》 [59] 【ウワミズザクラ(上溝桜)】
古い名前をハハカ(波々迦)と言います。雑木林の林縁に白い花が咲き乱れます。名前の由来は、古代からウミガメの甲羅やシカの骨に溝を刻み、ウワミズザクラを燃やした火でそれらをあぶり、その時に出来たひび割れの形や方向で吉凶を占いました。上にできる溝で占ったことに由来します。(占う方法は諸説あるようです)
現在も天皇即位に伴う「大嘗祭」に供える米を育てる地域を決める「斎田点定の儀」で行う「亀卜」(亀甲占い)にウワミズザクラが用いられています。
奈良の香具山神社のご祭神、櫛眞命(くしまのみこと)は神意を伺う占いの神であり、国家の大事を判断する亀卜や、天皇即位の大嘗祭に行われる神饌田ト定に関わる神として重んじられています。先の天皇即位の際にも、香具山神社神域のウワミズザクラが宮内庁に献納されています。平成天皇の即位後、「天波波迦」の碑が香具山神社境内のウワミズザクラの木の下に建立されています。
初夏に熟す赤い果実で作られるウワミズザクラ酒は、桜餅のような香りのするお酒で人気です。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)