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《森の植物の歳時記》 [54] 【ウラシマソウ(浦島草)】
【ウラシマソウ(浦島草)】
早春の雑木林で葉を広げます。広げた葉の下に長い糸状の付属体を伸ばした花を咲かせます。この姿を浦島太郎の釣り糸に見立てた名前と言われています。この付属体をたどっていくと小さい花を着けた肉穂花序(にくすいかじょ)と呼ばれる花の塊があります。花は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれる苞葉に包まれて保護されています。
春まだ寒い頃、仏炎苞に包まれた中は暖かく、訪花した虫が活動しやすくなっています。
雄株に入った虫は仏炎苞の中で動き回って、体に花粉をつけて雌株に移動して受粉に貢献します。細い筒状の仏炎苞から抜け出すのは困難ですが、雄株は前の合わせ目に小さな隙間があり、抜け出せるようになっています。雌株は虫が簡単には出られないように、合わせ目の隙間はありません。花粉をもらえば、それを運んできてくれた虫のことはどうでも良い? 中で息絶えている虫も見られます。子孫を残すための方策なのでしょう。生育環境によっては小さな子株に分裂して花を着けなくなることもあります。
廣畠眞知子氏(千葉県森林インスタラクター会会員、元千葉都市緑化植物園緑の相談員)